2015年7月1日水曜日

「うつ病診療の論理と倫理」という特集

「うつ病診療の論理と倫理」と題された《精神医学の基盤》No2が7月17日に発売されます。
こういうタイトルは、普通医学書としてのカテゴリーに入りにくく、どちらかというと医師以外の著者による理論的な考察であったり、告発本だったり、あるいは政治的なプロパガンダだったりすることが多いように思われます。
しかし、この特集の執筆者の多くは、まぎれもなくいまの精神医学界をリードする俊英たちです。出版者としては、現在の精神科医療の真っただ中で活躍する医師や研究者たちに書いてもらうということが最優先課題でした。
いずれの寄稿者も、かなり明確な意見をお持ちの先生方ばかりですから、全体としての統一性などは望むべくもありませんが、とにかくこれだけうつ病患者が増加し、自殺者もあまり減らない現状がある一方、「うつ病診療」の在り方が批判され、もう一つの社会問題化しているという現状が両立していることは、すごく奇妙なことであるように思います。
 
どこまで読者諸氏の期待に応えられるか、あるいは読者はいまさらこんな特集に期待してはいないのかもしれませんが、うつ病診療に従事するすべての人びとに読んでいただきたいと願っています。

■主な内容を掲げておきます。
Power Mook 《精神医学の基盤》2 
特集「うつ病診療の論理と倫理」(責任編集=田島治 × 張賢徳)

対談= 最近のうつ病診療の傾向をどう考えるか(田島治 × 張賢徳)
徹底討論=「うつ病の理解と抗うつ薬の適切な使い方」(樋口輝彦・神庭重信・張賢徳)
今日のうつ病診療における問題点と課題(松浪克文)
うつ病の論理と倫理 医療人類学的視点から(北中淳子)
マスメディアとうつ病(岩波明)
うつ病診断・治療の論理と倫理 過剰診断の問題,過少診断の問題(張賢徳)
臨床精神病理学的視点から見たうつ病の診断学(古茶大樹)
今日のうつ病診療における課題と展望(中村純)
日常診療におけるうつ病(1)―プライマリケア医の立場からの実践的治療論(井出広幸)
日常診療におけるうつ病(2)―総合病院から本物のうつ病を再考する(大坪天平)
日常診療におけるうつ病(3)―労働者のメンタルヘルスケアの視点(桂川修一、黒木宣夫)
薬物療法の効果とリスク 抗うつ薬の有効性と安全性をどう評価するか(仙波純一)
うつ病の精神療法再考(中村敬)
うつ病に対するneuromodulation( 高宮彰紘、鬼頭伸輔)
開発中の抗うつ薬と今後の薬物療法の展望(竹林実、 山脇成人)
エッセイ:(広瀬徹也)(人見一彦)
CINP理事長 インタビュー(山脇成人)
コラム:フーコーと精神医学(栗原仁)
シリー ズ日本の精神科医療(2) 「治療に難渋するうつ状態の診断と寛解への次の一手(加藤正樹)

定価はNo1と同じで本体4000円です。
ぜひご予約ください。